先週の土曜日に行いました2017年度学校説明会には、たくさんの皆さまにお越しいただきありがとうございました。限られた時間ではありましたが、学校のことを少しでもご理解いただけたのではないかと思います。
今年度、新しく小学校・中学校校長としてご縁をいただいた私にとって、小中の新入生の保護者を除けば、この日が初めての出会いでした。直接、言葉をかけさせていただける最初の貴重な場ということで、「AMICUS Direction」と題し、今の子どもたちを取り巻く世界の状況や今後の教育の変化、アミークスでめざす子どもの育成について、私の思いをお伝えしました。
以下、簡単にその内容を整理しておきます。
☆ファーストペンギンになれ!
海に飛び込まないと エサが取れないんだけれど、なかなか飛び込みづらい…。 みんなで一緒に何かしよう!って 言ってる奴がたくさんいて、その中に1匹だけ勇気のある奴がいる。そいつが飛び込むと、次々と飛び込んでいく。
そんな勇気ある「最初のペンギンになろう!」って、子どもたちに伝えたい。
私がAMICUSに来ようと決めたのも、そういう気持ちがあったからです。
☆お伝えした4点
今日の話は、こんな内容です。
①ひとつの未来予想図 One Example of Future Image
②教育が変わる CHANGE in Education is Coming…
③AMICUSの取り組み AMICUS Approach
④今後に必要なチカラ Skills Valued for Now and Onward
◇◇
①ひとつの未来予想図 One Example of Future Image
最初に、「これから先、どんな未来になるか」ということを、皆さんと一緒に考えたいと思います。象徴的な数字を3つ紹介します。
1つめ「65%」。これは、アメリカのデューク大学の先生の予測で、 いま中学校1年生に相当する子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろうというものです。今、存在しない仕事が半分以上新しくできる、ということです。「将来、何になりたいの?」と尋ねた時、65%の子どもが言えなくても当たりまえ…ということになるのかもしれません。
2つめ「47%」。これは、10〜20年後に自動化され、なくなる仕事がこれだけあるという予測です。今の半分くらいの仕事がなくなるわけですが、どんな仕事がなくなるの?というと、翻訳家、証券マン、生命保険の勧誘、レジ係、学校の教員?! …と言われています。じゃあ、その仕事は誰がやってくれるのか? というと、ロボットがいるじゃない、人工知能があるじゃない、となるわけです。
で、きわめつけはこれです。「15時間」。2030年までに、 1週間15時間働けば、 今と同じような生活を送れるだけの社会になるだろうと。週休5日、時給800円×15時間で、果たして暮らしていけるでしょうか? 今と同じ給料で週休5日、週15時間労働ならいいですが、そんなおいしい話はないでしょう。いったい、どんな時代になるんでしょう。
次に、今後の人口動態予測を見てみましょう。2030年、あと13年後はどんな世の中になっているのか。高齢化がどんどん進み、 3人に1人が65歳以上になる。こんな世の中、 かつて日本では経験がなかったことです。反対に、生産年齢人口や子どもたちの数はどんどん減少し、このままでは日本が立ち行かなくなる。そういう予測が、統計から導き出されています。
ただ、沖縄県に目をやれば、少し異なった数値が見えてきます。2010年の生産年齢人口(15~64歳)を100とした時、2040年にどうなっているか。沖縄県は84.5で15%の減少にとどまる一方、秋田県は52.3%で、ほぼ半分になるという予測が出ています。これからの日本を担うのは沖縄県だ、という意識を持つことの意味が、ここにあるかもしれません。
ここで、皆さんに質問です。自分の知らないこと、新しいことを提示されたとき、どんな反応をされますか? 「無理だ、できない」と思いますか、それとも「おもしろそうだ、やってみよう」と思いますか? それが良いことか悪いこととかは別にして、「これ無理やし、 やめといたほうがいいよ」と考えるのが”20世紀型人間”で、20世紀に学校で学んだ人は十中八九、こんなことを考えるそうです。
何か自分が予期せぬことを言われたら、「あ、ちょっと待って。それ無理!」となるのが一般的でしょうが、「そりゃ、新しいことを言われたら、わからんのは当たり前」という前提に立てば、 否定するのは、後でもいいわけです。「わかった! 面白そうやん! やってみようや!」の方が、絶対に楽しいし、新しいものを生み出せます。「この部分は無理かもね」って、”無理”を口にするなら、後でいいと思うのです。
私たち20世紀型の人間は、心をできるだけオープンにして、相手の言ったことを、まず受け入れるという姿勢がないと、 21世紀の子どもたちに向かって何かをしようとする時、なかなか辛いだろうな、ストレスがかかっちゃうだろうな、と思います。
②教育が変わる CHANGE in Education is Coming…
今の学校のシステムは、公立私立問わず、「一生懸命頑張れば、どんどん世の中が良くなっていく」そんな時代に作られたシステムが基本です。一生懸命コツコツとやり続けられることを良しとするような、 “そういう子どもを、 なるべくたくさん育てよう!”ということで作られたシステムです。
ですが、そんな時代はもうとっくに終わっています。そのことは誰もが気づいていますし、国だってとっくに気づき、対応しようとしています。画一、均一のなかで、一定水準のものを作っていく時代ではないということは、もはや疑う余地はありません。
また、2020年度から、今の大学入試センター試験にかわって、新たな入試制度が導入されることは皆さんもよくご存知のことだと思います。ここで詳しいことは申し上げませんが、教科書の内容を記憶し、試験で時間内にどれだけ正確に吐き出せるかといった力だけでは勝負になりません。偏差値に一喜一憂するような入試ではダメだということを、大学入試を変えることによって形にしようとしているわけです。
現在の学校教育に対して、大きな警鐘が鳴らされているということを、私たちはもっと考えなければなりません。
今、学校で育成すべき「21世紀型スキル」は、この3つだといわれています。
1. Information and communication skills (情報・メディアリテラシー、コミュニケーション力)
2. Thinking and Problem-solving skills (分析力、 問題発見・解決力、創造力)
3. Interpersonal and self-directional skills (協働力、自己規律力、責任感・協調性、社会的責任)
私たちが取り組むべきは、正解のない「問い」へのアプローチであり、児童生徒に身につけさせるべき力は「課題解決に向けて協働する力」「自分の考えを表現する力」「クリエイティブな思考力」です。
③AMICUSの取り組み AMICUS Approach
このような教育改革の渦中にあって、AMICUSはすでにその改革の先を走っています。そもそも、創立理念を見れば、いま身につけさせるべきだといわれているような力を育てるべく設立された学校だということは容易にわかります。
AMICUSの教育理念は、『自分で考え、学び、行動し、自分の将来を自分で切り開く「自立した子ども」を育てる』。
具体的には「Creative Thinker」「Independent Learner」「Risk Taker」の育成をめざし、イマージョン教育をその柱に、プロジェクトベースの学びをふんだんに取り入れ、ディアリテラシーを育てる独自の教育プログラムを展開していく場です。
まさに、21世紀型スキルの育成にぴったりの学び舎です。
私は、思います。
学校って、”育てる場” なんだから、子どもたちにはどんどん失敗をしてほしいと。学校って失敗が許される唯一の場所ですから、いっぱい失敗したらいいやん! って。そうすることで、そこからいっぱい学べますから。
失敗しないと、何も学べません。学校なんだから、どんどん失敗していいよ!って、先生たちには、そう子どもに声をかけてあげてほしいと思っています。
また、私たち大人って、よくこんなことを言いますよね。100点満点のテストを作りました。「あなた、60点やったでしょ。あと40点分、頑張りなさい!」。 いやいやいや、 その子は60点でも自分なりにすごく頑張ったかも知れません。でも、100満点のテストは、みんな100点取らなあかん、と。でも、それって誰が決めたんですか? 一生懸命頑張って60点とったら、褒めてあげないといけないんじゃないでしょうか。
“100点満点のテストは、 100点取らなあかん、 あと40点分頑張らなあかん” って、 すぐそんな「足りない」部分に目を向けてしまう。でも、そんなことやっていては、頑張ろうって気は起きないですよね。なので、その子の弱みをなんとかするよりも、その子の持っている良いところをどんどん伸ばすということにフォーカスした方が絶対にいいんです。
それなのに、学校ではそういうトーンになりづらい雰囲気があります。わかっているんだけれども、なかなかそれができない。それが現実です。でも、ちょっと考えの深い先生方はそれに気づき、対応を変え、取り組んでおられます。
もちろん、AMICUSはそれを一番に考える学校です。
私は、知識を教えなくてもいい、その代わりに「学び方の種をまこう!」ということを、一生懸命にやろうと 思っています。そのためには、学校が高い塀を立て、 学校だけでやろう!というのはとても無理なので、地域や企業どんどんつながり、先生だけではできないことを、いろいろな機関の力を借りて、任せるところは任せながら、連携してやっていこうと思っています。
④今後に必要なチカラ Skills Valued for Now and Onward
ここまで申し上げてきたように、いま学校教育は大きな転換期を迎えています。そんな中で、AMICUSの存在が、いまこそ輝く時だと思っています。
それはなぜか!
「言われたことだけをやるような人」、これをLevel 1と呼びましょう。で、Level 2は「ただ、言われたことをやるのではなくて “文句を言いながらやる人”」。実は、そういう人の方が 感じていることがあるんですね。できれば、その文句をアイディアに変える。そして、実行する。まさに、学校で育てるべきは、そんな子どもたち、そうLevel 4の子どもをいかにつくるかということが課題になっています。
先生が前に立って、「教科書何ページを開なさい!」「ここを覚えるのよ!」っていうような授業で、そんな子どもが育つはずありません。まさに、AMICUSがやっているような教育を、多くの学校が取り入れていかなければいけない時代になったと考えてください。
以前、別のところで子どもたちに、かっこいい大人ってどんな人だと思う? って聞いたことがあります。どんな答えが出てきたと思いますか?
・自分の意見をしっかり言える人
・自分の趣味を持ち続けられる人
・自分の決めたことを実行できる人
・自分でルールを決められる人
大きく、この4つに集約できました。
大人は、自分の意見を言ってほしい! 大人は、これが趣味やと思ったら どんどんやってほしい! お金がない、時間がないって 諦めないでほしい! お父さんお母さん決めたことあるんやったら、それを最後までやりきってほしい! みんながより良くなるようなルールを作ってくれたら、もっといい!
子どもたちにとって、憧れる大人、 将来なりたい大人って こういう大人らしいです。
じゃあこれに対して、大人はどうするのか。
・子どもから学ぶ
・常識枠に閉じ込めない
・一緒に成長する
私たち大人は、自分がこういう価値観で、こういうふうに思っている… という、今までの育ちの中で身につけた常識や、その枠の中に囚われている自分を、考え直した方がいいと思います。
で、子どもと一緒に純粋な目で見た、 純粋な心で考えたことを、 もしかしたらそうかもしれないな…って、いま一度子どもに戻ったような、何も染まってない時代に立ち返って、 その時の自分ならどう考えるかな?っていうことを、子どもと一緒に考える。多分その方が、 子どもと大人がともに納得できる、”素敵な答え”が見つかるのではないかと思います。
ある本の中に、こんな言葉がありました。
「幸せな子」を育てるのではなく、 どんな境遇におかれても 「幸せになれる子」を育てたい。
当然、私たち大人は、 自分の子どもに幸せになってほしいし、それを願わない親はいません。そのために「あれしなさい、これしなさい」「あの方がいいよ、この方がいいよ」「こうした方が、あなたが大人になった時いいと思うわ」って、一生懸命声かけをします。でも、その声かけは、あくまでも声をかけるお父さんやお母さんが「いいことだ」と思っていることであって、 聞いてる子どもにとって、本当にそれがいいことかどうかわかりません。
確かに、今はいいかもしれないけど、 5年後10年後、その子どもがどういう境遇で、どういう人生を歩んでいるか分からないのに、今の価値観をもとに言ったことが、いろんな人生経験を積んだきた全ての子どもに共通する”幸せになる方法”でしょうか?
そんなこと有り得ないですよね。
なので、「お母さんはこう思うけど、 あなたはどう思う?」って、この先、子どもが大きくなって、こういうときが来たら、こういう風に考えたらいいじゃない? こういうことも考えられるよ…と、いろいろな視点で物事を見て、考えられるようになれるような、そんな接し方をすべきだと思います。子どもが大きくなって、 自分で自分の道を決めていかなければならないときに、様々な考えを自分で見つけていけるような、そんな「思考の種まき」をしていきたいと思っています。
◇◇
締めくくりに…
いま、私が一番気に入っている言葉があります。AMICUSへの決断を支え、背中を押してくれた言葉です。
何もしなければ何も起きない。
行かなければそれはやってこない。
飛び出さなければ世界は変わらない。
すべてのひとの心に翼はある。
使うか、使わないか。
世界は待っている。
飛ぶか、飛ばないか。
海をこえよう。
言葉をこえよう。
昨日をこえよう。
空を飛ぼう。
― ココロノツバサ。ANA 60th ―
この言葉を、子どもたちにも贈り、今日の話を締めくくります。
ありがとうございました。