「海からやってきた命」—戦後80年、語り継ぐべき“豚の物語”をアミークス中学生がミュージカルにして演じます
戦後80年という節目の年を迎える今、沖縄の戦後復興の原点を見つめ直し、未来へ繋ぐ学びの機会が求められています。沖縄アミークスインターナショナル中学校では、うるま市に伝わる感動的な実話「豚の物語」を中学生がミュージカルとして上演します。
沖縄戦の後、14万頭いた豚はわずか2,000頭にまで激減しました。人々は深刻な飢餓に苦しみました。この知らせを聞いたのは、ハワイに移民として渡っていた沖縄出身の日系人たちでした。彼らは「物資ではなく、生きた豚を送ることで、沖縄の長期的な自立復興につながる」と考え、全米から550頭の豚を買い集め、太平洋を越えて沖縄へ届ける壮大なプロジェクトを立ち上げました。1948年9月、うるま市出身の安慶名良信さんを含む7名が、機雷が漂う海を避けながら、また、台風という困難を乗り越えて、ついにホワイトビーチへ到着しました。豚は沖縄の大地で命をつなぎ、わずか3年で10万頭にまで回復し、食文化と経済の再建を支えました。
この物語の中心にいた7人は、「恩を着せたくない」と,自ら語ることなはなく,静かにその後の人生を送りました。そのため、最近までこの物語は広く知られていませんでした。けれども、私たちはふるさとを思う心と、命をつなぐために立ち上がった人々の勇気を忘れてはなりません。
アミークスの生徒たちは、うるま市教育委員会制作の漫画本『屋慶名良信物語~海から豚がやってきた』や、うるま市教育委員会史料編纂室の前田一舟さん,この物語の発掘に尽力されたハワイ海豚顕彰会代表の浜端良光さん、琉球大学教授の上江洲朝男さんから資料や助言を得て、物語の背景を深く学びました。そして、自らの演技でこの歴史を後世に伝える使命を担います。
舞台は6月28日(土)、物語ゆかりの地である「うるま市民芸術劇場(響ホール)」にて一度限りの上演となっています。「魚を与えるより、釣り方を教えよ」という諺のように、支援の真の意味を考えるきっかけともなるこの物語を、ぜひ多くの保護者の方々にご覧いただきたいと願っています。