11月7日、小学校1年生から3年生までの朝会がありました。その日は、幼稚園の年長さんも参加する予定でした。私は「何を話そうかな」といろいろ考えた結果、絵本を読むことにしました。
そして、朝会から2週間以上たった今週、複数の児童から突然、
「メリーはどうなったの?」
「お父さんのこと、ずっと嫌いだったの?」
と質問されました。
これまで朝会でたくさんお話をしてきましたが、
話したあとに児童から質問されたことは一度もなかったので、私はとてもびっくりしました。
そこで今回は、今月の朝会で読んだ絵本をあらためて紹介したいと思います。ご家庭でも話題にしていただけると嬉しいです。
💛💛💛💛💛
『メリーとのお別れ』
僕が小学校1年生の時の話です。
僕の家には、メリーという犬がいました。
とってもかしこくて、かわいい犬でした。
僕は、学校から帰るといつもメリーと遊んでいました。
ボールを投げたり、一緒に走ったり、本当に楽しかったです。
でも、ある日のことです。
メリーが近くにいた2年生の男の子たちに、石を投げつけられることがありました。
何回も、何回も、です。
いつもはおとなしいメリーですが、そのときはびっくりして、そして、がまんできずに、ひとりの男の子をかんでしまったのです。男の子は大泣きして家に帰りました。
次の日、その男の子のお母さんが学校に来ました。
「うちの子が犬にかまれました! 責任をとってください!」と言いました。
そのとき、僕のお父さんは、その学校の校長先生でした。
お父さんは、そのお母さんにあやまって、「この犬は処分します」と言いました。
夕方になって、お父さんが僕に言いました。
「メリーは、明日、となりの村の人が引き取りに来る。」
僕はびっくりして言いました。
「どうして? メリーは家族だよ! 弟みたいなものだよ!」
でも、お父さんは何も言いませんでした。
次の日。
となりの村の人が来て、メリーを連れていきました。
メリーは足をふんばって、行きたくないようにしていました。
僕は人生ではじめて大泣きしました。
メリーも泣いているように見えました。
その日から、僕はお父さんが大きらいになりました。
でもね……
今の僕は、アミークスの校長先生をしています。
今、自分が校長先生をしていると、あのときのお父さんの気持ちが、少しだけわかるようになりました。
きっと僕のお父さんも、悲しかったと思います。
でも、大人として責任をとらなければならなかったのです。
僕のお父さんはもう30年以上前に亡くなりました。
でも、もし会えるなら、僕は言いたいです。
「お父さん、ごめんなさい。そして、ありがとう。メリーのことも、お父さんのことも、僕はずっと忘れません。」
💛💛💛
絵本には、読む人それぞれが自由に解釈し、想像力を働かせることができるという大きな魅力があります。
朝会の後、児童から「メリーはどうなったの?」と質問があったのは、実は私がどんなに悲しい思いをしたかということに対して共感の気持ちを示したかったのかもしれません。
また、「お父さんのこと、ずっと嫌いだったの?」と尋ねた児童は、私と父との関係がその後どうなったのか気になったのでしょう。
私にとっては最初で、おそらく最後の自作の絵本です。私の記憶をそのままお話(絵本)にしただけですが、私のその絵本を通して子どもたちが自分なりに想像をふくらませ、登場人物の気持ちに寄り添おうとする姿が見られたことは、私にとっては大変うれしいことでした。

