校長室から 2026 / 06 / 24

中学校慰霊の日の授業

アミークス中学校では平和集会に、「うなぁ沖縄」の玉城さんをお招きし、沖縄戦と、今なお世界各地で続いている難民問題についてお話を伺いました。その中で、読谷村にあるチビチリガマとシムクガマの出来事が紹介されました。

 

二つのガマは、わずか800メートルほどしか離れていません。しかし、チビチリガマでは、住民82人が集団自決に追い込まれ、尊い命を失いました。一方、シムクガマでは、避難していた1000人以上の住民が、誰一人として命を失うことなく助かりました。

 

当時、ガマの外では銃弾が飛び交い、外へ出ることは自殺行為と思われるほど危険な状況でした。シムクガマの中にも、「アメリカ兵に捕らえられるくらいなら死んだ方がいい」「竹やりを持って敵に立ち向かいたい」と考える人々がいました。

 

そのような極限状態の中で、人々を落ち着かせたのが、ハワイから帰ってきた比嘉平治さんと平三さんでした。平治さんは、「アメリカ兵と話してくる」と言って、銃弾の飛び交うシムクガマの外へ出ていきました。そして米兵と話し合った後、ガマに戻り、「アメリカ兵は民間人を殺さないと言っている。さあ、ここから出よう」と人々に呼びかけました。その言葉を信じて外に出た人々は助かり、その方々の子どもや孫が、今も命を繋ぎ生きています。

 

私は講師の玉城さんのお話を聞きながら、以前読んだ下嶋哲朗さんの『沖縄・チビチリガマの“集団自決”』や、懐中電灯を手に実際に入ったシムクガマのことを思い出していました。

 

当時(1990年頃)、私は中学校の英語教師として、三人称単数や仮定法などの文法を一生懸命教えていました。しかし同時に、「私は何のために英語を教えているのだろう」と悩んでもいました。その頃、下嶋さんの本に出会い、比嘉平治さんの行動から、英語教育が目指すべき三つの大切なことを学びました。

 

一つ目は、言葉の力を信じ、学んだ英語を使って、誠意をもって話し合う力を身に付けることです。二つ目は、相手の考え方や文化を理解することなしには英語で伝え合うことも難しいということです。そして三つ目は、英語教育に限ったことではありませんが、学んだことを基に、勇気をもって行動することです。

 

比嘉さんは英語を話すことができました。しかし、英語の力があるだけでは、危険なガマの外へ出ることはできなかったでしょう。話し合うことによって道を開くことができるという、言葉への強い信頼があったからこそ行動できたのだと思います。また、アメリカ兵も同じ人間であり、民間人をむやみに殺す存在ではないことを知っていました。相手の文化や考え方を理解していたことが、人々の命を救う行動につながったのです。

 

今回、私は初めて、比嘉さんが米兵と話し合っている写真を見ました。比嘉さんも米兵も地面に腰を下ろし、互いに目を合わせながら話しているように見えました。それは単なる「立ち話」ではなく、一人の人間と一人の人間が、命を守るために真剣に向き合っている姿でした。

 

その後、私は当時京都教育大学教授であった齋藤栄二先生と出会い、英語教師が目指すべき方向について多くを学びました。それは、比嘉さんの行動から感じ取った、「言葉への信頼」、「異文化理解」、そして「勇気」という三つのことと重なっています。

 

平和集会の最後に私はメッセージを求められましたのでアミークス中学生には次のようなお願いをしました。

 

「言葉に対する信頼をもってください。言葉を通して分かり合えるという信念を持ってください。また、異文化理解を深めてください。世界には自分とは異なる文化や価値観があります。相手を知ることが問題の解決に繋がります。そして、必要な時には勇気をもって行動してください・・・」

 

比嘉平治さんが示したように、言葉には人を動かし、命を救い、未来をつくる力があります。慰霊の日を、過去の悲しい出来事を振り返るだけの日ではなく、私たちがこれからどのように生きるのかを考える日にしたいと思います。

 

学園長 大城賢

 

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